第120回 日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会

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光デジタル法の狭帯域光法に該当する Optical Enhancement(以下 OE)は、主に 415nmと 540nmの光を照射することにより粘膜表層の血管と構造を見やすくする画像強調機能である。 415nmの光は粘膜表層の血管内のヘモグロビン、 540nmの光は粘膜深層の血管内のヘモグロビンに吸収されることにより、血管が濃く描出される。それを画像処理で粘膜表層の血管を赤茶色、深層の血管を緑色にし、高いコントラストで表層血管が表示されるため、粘膜表層に微小血管が増生する表在癌をはじめとする早期癌の発見に有用である。

近年、こうした画像強調技術の発展や内視鏡の高解像度化により、上部消化管内視鏡検査で多くの早期咽喉頭病変が発見されるようになった。耳鼻咽喉科用のスコープも高解像度化が進んでいるとはいえ、径が 3mm〜 4mmでは搭載できる撮像素子の大きさに限界があり、上部消化管スコープの解像度には及ばなかった。しかし、 PENTAX Medicalのビデオ鼻咽喉スコープ VNL-1590STiは、径が 5.1mmと太いが高画素 CCDを搭載しているため上部消化管スコープと同等の高画質画像が得られる。また、通常使用する耳鼻咽喉科用のスコープよりピント位置を前にしているため、近接観察が可能である。このスコープに OEを併用することで、早期癌の発見や進行癌の浸潤範囲の診断の精度を向上させることができる。さらに OEは、 415、 540nm以外の波長の光も適度に照射しているため、咽喉頭のような複雑な形状をした部位では、明るい光で細部を観察できるという強みがある。当科では実際に、高画質鼻咽腔スコープ VNL-1590 STiと OEを、咽喉頭の精査目的や術前の病変範囲の詳細な観察に使用している。さらに術中の切除範囲の決定に有用であると考えており、喉頭微細手術や、咽頭癌の経口的切除手術( TOVSや ELPS)、ロボット支援下経口手術において、高解像度の VNL-1590STiと OEを併用している。

今後、耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が咽喉頭癌を積極的に加療し、術後も再発や新たな病変の有無を経過観察していくためには、病変を同定する能力や病変範囲を見極める能力が必要となる。本セミナーでは、外来での OEの活用方法や術前の切除範囲の決定を OEでどのように行っているのかを紹介する。

福原 隆宏

【学歴】
2003年 鳥取大学医学部卒業
2014年 鳥取大学医学部博士課程卒業
【職歴】
2003年 鳥取大学医学部附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 医員採用
2005年 草津総合病院頭頸部外科センター 医員採用
2008年 鳥取大学医学部附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 医員採用
2014年 鳥取大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科 助教採用
2018年 鳥取大学医学部耳鼻咽喉。頭頸部外科 講師採用
【資格】
耳鼻咽喉科専門医・指導医
癌治療認定医
日本内分泌外科専門医
日本超音波医学会認定超音波専門医・指導医
da Vinciロボット手術コンソールサージャン
臨床研修指導医

2019/05/09 13:00〜13:50 第9会場