第120回 日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会

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平成19年4月施行の改正医療法で、各医療機関において院内感染対策は医療安全の一環として位置付けられ、耳鼻咽喉科診療においても院内感染対策は重要な項目となっています。一般的な感染対策としては ①標準予防策と ②感染経路別予防策があります。耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域は、耳、鼻、咽喉頭、頭頸部など幅広い範囲を含んでおり、その多くには粘膜で覆われた部位が存在します。粘膜は健常な状態であっても病原微生物の侵入門戸となり、常在菌が存在しており、医療従事者は常に細菌に接触しています。さらに、くしゃみ、咳嗽、出血などによって体液と接触する機会も多いのが現状です。また鼓膜切開や生検などの観血的処置が外来でしばしば行われております。このように、耳鼻咽喉科の外来診療は汚染の温床となる環境に暴露されており、感染対策を講じることが重要です。耳鼻咽喉科では処置器具での診察が必須であり、医療機器の感染対策も重要です。診療ユニットのスプレーノズルの汚染も指摘されています( Ikeda et al., 2009)。

日本耳鼻咽喉科感染症エアロゾル学会の感染症研究推進部会では2018年8月から11月に感染症エアロゾル学会員、日耳鼻静岡県地方部会・和歌山県地方部会会員、東京都港区・江戸川区・江東区・葛飾区・墨田区・足立区耳鼻科医会会員、千葉県浦安・市川耳鼻科医会会員を対象に感染対策に関するアンケート調査を実施しました。アンケート調査の内容は手指衛生、診療器具の包装、スプレーノズルの交換・清拭、小瓶の消毒です。アンケートの回収率は40.3%で、回答数は399件でした。下表に各アンケート項目別の大学病院、市中病院、診療所の集計結果を%で表示します。手指衛生と診療器具の包装は診療所での意識は低く、すべての施設でスプレーノズルへの感染対策の意識が低く、薬液小瓶の感染対策は市中病院や診療所で不十分な結果でした。以上を踏まえて、今後の感染対策の問題点について論議する。

池田勝久
1981年 東北大学医学部卒業
1983年 東北大学医学部耳鼻咽喉科、助手
1987~89年 米国ミネソタ大学医学部留学
1993年 東北大学医学部耳鼻咽喉科、講師
1999年 東北大学医学部耳鼻咽喉科、助教授
2003年 順天堂大学医学部耳鼻咽喉科、主任教授

2019/05/09 16:00〜17:30 第8会場