2009年に米国 Food and Drug Administration( FDA)で経口的ロボット支援手術が承認されたのを皮切りに、中咽頭癌治療を中心に耳鼻咽喉科領域でもロボット支援手術が世界的に普及してきている。本邦では耳鼻咽喉科領域は da Vinci Surgical System(ダビンチ)の適応外であったため、咽喉頭癌への適応拡大を目的に、2015〜2016年に先進医療Bとして東京医科大学、鳥取大学、京都大学で「咽喉頭癌に対する経口的ロボット支援手術の安全性・有効性に関する多施設臨床試験」が実施された。また、日本耳鼻咽喉科学会、日本頭頸部外科学会、日本頭頸部癌学会よりダビンチの早期導入を希望する要望書が厚生労働省へ提出され、2017年9月に医療ニーズの高い医療機器として承認された。これらの結果および経緯を踏まえ、2017年末には企業より da Vinci Surgical Systemの頭頸部外科領域への適応拡大申請がなされ、2018年8月に頭頸部外科領域(経口的に行う手術に限る)が承認されている。
適応拡大承認を受け、2020年度の診療報酬改定での保険収載が期待されており、咽喉頭癌に対するロボット支援手術の実施に関する体制作りが進められている。日本頭頸部外科学会では耳鼻咽喉科・頭頸部外科におけるロボット支援手術の指針・教育プログラムに関する委員会、および講習会実行委員会が立ち上がり、術者の資格基準・施設要件などを定めたロボット支援手術にかかわる指針やロボット支援手術教育プログラムが作成され、2019年2月に公表された。教育プログラムにはブタを用いたベーシックトレーニング、献体を用いたアドバンストレーニングが含まれているが、すでに10以上の施設から受講の申し込みがあり、トレーニングが順次スタートされている。また保険収載をみすえてレジストリシステムも整備されている。
国内耳鼻咽喉科における現状ならびにロボット支援手術に関する指針等の内容について簡単に紹介する。
楯谷 一郎(たてや いちろう)
略歴
1994年 京都大学医学部卒業
1994年 京都大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 研修医
1995年 滋賀県立成人病センター 医員
2003年 京都大学大学院医学研究科修了
2003年 ウィスコンシン大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 研究員
2006年 京都桂病院耳鼻咽喉科 医長
2008年 京都大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教
2013年 京都大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 講師
2019年 京都大学大学院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 准教授
2019/05/09 16:00〜17:30 第9会場