毎年さまざまなスポーツの分野で日本選手が活躍し、注目を集めている。また本年9月にはラグビー・ワールドカップが開催され、全国の会場で熱戦が繰り広げられる。さらには来年開催予定の東京オリンピック、パラリンピックに向けた準備も本格的に進んでいる。私たちの周りを見回すと、観戦するだけではなく、一般の人々が気軽にスポーツを行う環境も整っている。そのような状況の中で、運動能力と身体機能の関係、病気の運動に及ぼす影響などが、科学的観点からしばしば取り上げられる。一方で国際的なドーピングの問題、国内で最近起きた類似問題などについては、医学界も関与を避けることができない。
しかし、一般に耳鼻咽喉科とスポーツとの関係については、あまり知られていない。現実には、オリンピックやパラリンピックに出場するようなトップアスリートでも耳鼻咽喉科疾患を抱えている選手もおり、適切な治療や処置によって、成績が飛躍的に伸びたという例も聞かれる。そこでスポーツ耳鼻咽喉科研究会が立ち上げられ、耳鼻咽喉科の専門知識を活用することにより、⑴パフォーマンスの向上(バランス制御へのアドバイス・鼻呼吸によるコンディショニングなど)⑵疾患・障害・外傷の予防と治療(運動誘発性疾患・サーファーズイヤーなど)⑶アスリートの耳鼻咽喉科領域機能の調査(競技に特化した耳鼻咽喉科機能を調査し、才能の発掘やトレーニングの方向性に用いる)⑷運動による耳鼻咽喉科疾患の治療(メニエール病の有酸素療法など)⑸上記各項目に関する啓発、を図っている。
このシンポジウムでは、まずアテネオリンピック競泳バタフライ銅メダリストの中西悠子氏に基調講演をお願いし、その後、4人のシンポジストの先生方の講演を企画している。耳科領域については、和田講師より外耳・中耳・内耳がどのようにスポーツとかかわっているかを具体的にお話ししていただく。鼻科については、大木講師より運動機能にとって重要な鼻呼吸を話題の中心として解説を進めていただくことになる。口腔・咽頭科領域に関しては、司会も担当する大谷講師が運動誘発性疾患を中心に話題提供を行う。さらに、切実な問題であるドーピング問題について、福田講師に自身の経験を交えた具体的な解説をお願いしている。
これらの講演を基として、会員の先生方にスポーツ選手の治療に当たる際の注意事項を確認していただき、多くのスポーツ愛好家に対するご助力をお願いできれば幸いである。そして今後のスポーツの祭典、スポーツと共に歩む社会に一層の関心を持っていただければ、と希望している。
大谷真喜子
1985年 関西医科大学卒業
1991年 関西医科大学耳鼻咽喉科大学院卒業
1992年 INSERM U-254(フランス・モンペリエ)フランス政府給費留学
1993年 関西医科大学耳鼻咽喉科
1994年 済生会泉尾病院耳鼻咽喉科
1999年 大道会大道病院耳鼻咽喉科
2006年 細田耳鼻科EAR CLINIC
2016年 和歌山県立医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科博士研究員
2018年 和歌山県立医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科講師
日本耳鼻咽喉科専門医、日本めまい平衡医学会専門会員、日本抗加齢医学会専門医、ICD、
日本水泳ドクター会議会員、スポーツドクター、障がい者スポーツドクター
2019/05/09 16:00〜17:30 第1会場