多系統萎縮症( Multiple system atrophy ; MSA)は黒質、線状体、小脳の神経細胞をはじめ、脳幹部の神経核の萎縮脱落を来す変性疾患であり、脊髄小脳変性症の中では最も頻度が高い。中年以降に発症し、呂律緩慢、排尿障害や嚥下障害などを呈する。本症の特徴として、病状の進行に伴ってときに声帯外転障害や吸気時に声門が内転する奇異性声帯運動障害、喉頭蓋が内陥する floppy epiglottisを来す。結果、睡眠中には特異ないびき音、吸気性喘鳴を来し、病状がさらに進行すると両側の声帯が正中で固定し、高度の呼吸障害を呈することになる。したがって、声帯外転障害などの咽喉頭所見の早期発見による治療介入により生命予後の改善につながる可能性があり、今回これらの症例を呈示するとともに、多系統萎縮症における耳鼻咽喉科のかかわりついて文献的考察を加えて報告する。
2019/05/09 17:40〜18:46 ポスター会場