症例は83歳、軽度認知症を有する女性で、3年前に当科で右人工内耳植込み術を施行した。術後聴取は良好であったが、2年前から MRSA感染を伴い人工内耳インプラント一部が表皮から露出した。人工内耳入れ替え手術を提案したが機能に問題がないため受け入れず使用を継続、関連病院と施設にて定期的な創部洗浄を行っていた。1年前から感染が拡大し、インプラント全体とリード線が露出してきたため、人工内耳入れ替えを受け入れた。当初は感染のリスクから二期的手術を予定したが、本人・家族の失聴期間への不安が強く一期手術の強い希望があり、耐術能や認知症悪化も考慮した上で術中判断とした。外耳道や鼓室内に感染がなく一期手術を行い、術後経過も良好であったが、術後失聴期間に辻褄の合わない言動や行動が見られるなど、短期間の失聴でも認知症の悪化を示唆する行動が見られた。高齢・認知症の人工内耳症例は今後ますます増加すると考えられ、このような症例では十分な戦略を立て、可能であれば一期的な入れ替えを目指すことが望ましいと思われた。
2019/05/09 17:40〜18:46 ポスター会場