第120回 日本耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会

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56歳、男性。誘因なく急性に右耳閉感、耳鳴を自覚し近医耳鼻科より発症1週後に紹介受診。当科初診時、右 42.5dB(気導、3分法)の伝音難聴を認め、ティンパノメトリでは右 Adであった。鼓膜前方が暗紫色に透見しており、同日撮影した側頭骨 CTではツチ骨前方に限局する軟部陰影を認め、中耳出血、または腫瘍などが疑われた。経過観察にて鼓膜所見は改善したが、右 31.7dB(気導、3分法)の伝音難聴が残存しティンパノメトリでの Ad所見も持続。発症2カ月時点での CTでは軟部陰影は消失し、耳小骨離断を示唆する所見も明らかには認めなかった。発症8カ月後に試験的鼓室開放術を施行。ツチ骨柄の基部で骨折を認めており、鼓膜や周囲組織との間に軽度の癒着を認め、難聴の原因と考えられた。癒着部を剥離した上で、耳珠軟骨をツチ骨頸部と鼓膜との間に挟み込んで伝音再建を施行。術後は右 26.7dB(気導、3分法)と聴力の改善を認めている。明らかな外傷性のものを含め、ツチ骨単独の骨折はまれであり、文献的考察を加え報告する。

2019/05/09 17:40〜18:46 ポスター会場