耳下腺内嚢胞性疾患は、非腫瘍性嚢胞と腫瘍性嚢胞の二つに大別されており、前者の頻度はまれとされている。当科において術前細胞診で耳下腺内嚢胞病変が疑われ手術による摘出を行った症例について後ろ向きに検討を行った。2006年4月から2018年10月の間に対象となった症例は12例であった。術後の病理診断は、多形腺腫4例、ワルチン腫瘍4例、基底細胞腺腫1例、リンパ上皮性嚢胞1例、唾液腺導管嚢胞1例、腺房細胞癌1例であった。非腫瘍性疾患であるリンパ上皮性嚢胞と唾液腺導管嚢胞症例以外は、全例腫瘍性疾患であった。また、腺房細胞癌であった症例は、はじめ非腫瘍性の耳下腺内嚢胞と診断していたが長期経過で癌であることが判明したケースであった。耳下腺内の嚢胞性病変では細胞診による精度の高い診断は困難であり、腫瘍性疾患を念頭に置いた対応が必要であると考えられた。
2019/05/11 13:50〜14:50 第9会場