翼口蓋窩は解剖学的に上顎洞後壁、蝶形骨洞体部・翼状突起、口蓋骨垂直版に囲まれた狭小な構造である。この部位に発生する腫瘍はまれであり、翼口蓋窩を走行する神経や血管より発生する腫瘍のほかに、周囲臓器から進展する腫瘍(骨原性腫瘍や各種の間葉型腫瘍など)が発生する。治療法を検討する上で組織診断が必要だが解剖学的に到達が困難であり、アプローチ法については個々の症例で検討を要する。当院では翼口蓋窩を占拠する腫瘍に対して積極的に内視鏡下に腫瘍生検もしくは切除を行っている。2013年から2018年の5年間で12症例の翼口蓋窩腫瘍の診療を行った。このうち6例は腫瘍減量もしくは切除、残りの6例は生検のみが行われた。病理診断結果は6例で悪性腫瘍であり、これらの症例では根治切除は困難であったため放射線や化学療法などの追加治療が行われた。本報告では、翼口蓋窩に発生した腫瘍の診療について、当院で経験した症例の検討およびアプローチの工夫などついて報告する。
2019/05/11 9:15〜10:15 第9会場