異所性甲状腺は、甲状腺原基の下降障害発および甲状舌管残存組織内への甲状腺組織の迷入によって生じる比較的まれな疾患である。発生部位は、舌根部が最多で多くは甲状舌管の経路に沿う。甲状舌管経路外の発生はかなりまれである。今回、われわれは異所性甲状腺の5例(男性1例、女性4例)を経験したので報告する。発生部位は、3例が舌根部、1例がオトガイ下部、1例が顎下部であった。舌根部の症例は症状が乏しく経過観察となっており、そのうち1例は甲状腺機能低下症がありホルモン補充を行っている。オトガイ下部の症例は、異所性甲状腺癌であり、摘出術後、再発・肺転移を認め甲状腺全摘出術後に放射性ヨード内用療法を行った。顎下部の症例は、腫瘤を摘出したところ異所性甲状腺の診断となった。
異所性甲状腺は有症状時手術が検討されるが、摘出により甲状腺機能全廃や嚥下機能低下などの合併症の可能性もあり慎重に適応を検討すべきである。まれな疾患ではあるが咽頭違和感を訴える患者の診察では念頭に置くべきである。
2019/05/11 9:15〜10:15 第9会場