唾液腺導管癌は、全唾液腺腫瘍の数%前後を占めるまれな疾患である。組織学的には高悪性度に分類されるとともに、原発巣、所属リンパ節、遠隔臓器に高率に再発し、5年生存率は40%未満と予後不良な癌である。治療としては、従来原発巣に対する拡大手術、頸部郭清術、術後照射が行われてきた。近年、病理学的には浸潤性乳管癌に類似することから、乳管癌と同様にヒト上皮増殖因子受容体2型( HER2)の過剰発現を認めることが報告されている。 HER2を標的とするトラスツズマブは、 HER2蛋白に特異的に結合した後、抗体依存性細胞障害作用により抗腫瘍効果を発揮する。乳癌では HER2の過剰発現が、 HER2モノクローナル抗体であるトラスツズマブに対する反応性のよい指標とされており、広く治療に応用されている。今回、耳下腺原発唾液腺導管癌3例に、耳下腺全摘および頸部郭清術の後、トラスツズマブによる分子標的治療と放射線治療を行った。いずれの症例も HER2陽性であり、現在も再発転移を認めず良好な経過を取っている。文献的考察を含めこれを報告する。
2019/05/11 13:50〜14:50 第5会場