近年、当帰芍薬散が、感冒後嗅覚障害など嗅神経性嗅覚障害に有効性を示すことが報告されている。今回、嗅神経の再生に及ぼす影響について、 In vivoならびに In vitroの実験系で検討したので報告する。 In vivoの研究としては、メチマゾール投与により嗅神経の変性を生じさせたマウスにおいて、当帰芍薬散含有資料の有無による嗅神経の再生を観察するとともに、再生時の嗅球における神経成長因子( NGF)の発現も観察した。 In vitroの実験としては培養アストロサイトに添加した当帰芍薬散ならびに構成生薬による NGFの発現を観察した。動物実験においては嗅神経の変性後、当帰芍薬散の服用により嗅神経の再生が促進され、その際に嗅球における NGFの産生も活性化することが判明した。培養アストロサイトを用いた研究では、当帰芍薬散の添加により容量依存的に NGFの mRNAならびに蛋白が増加し、6種の構成生薬の中で、蒼朮と当帰に NGF増加作用を認めることが判明した。以上の結果から当帰芍薬散は、嗅球内の NGFを活性化させ、嗅神経の再生を促進することが明らかとなった。
2019/05/11 13:50〜14:50 第3会場