人工内耳術後の場合でも、適切な前処置後に1.5T以下の MRI検査は可能とされている。今回、両側聴神経腫瘍と脊髄腫瘍を伴う神経線維腫Ⅱ型の患者で、1.5Tの MRIにより人工内耳体内磁石の逸脱が生じた例を経験した。
症例は31歳男性。左人工内耳挿入術(Cochlear, CI512)を施行し、経過は良好であった。5カ月後に他院で脊髄腫瘍の術前 MRI(1.5T)検査を受けた際、包帯を装着するも疼痛と検査直後より挿入部の腫脹が出現した。当科のX線撮影で磁石上方が逸脱しており、用手的整復は困難で外切開による磁石整復を行った。この際、磁石と反応しない非磁性体器具が有用であった。
術後9カ月めに当院での MRI施行を依頼され、スプリントとヘッドバンドでインプラント埋込部を固定して 1.5Tの MRIに臨んだが、施行前に疼痛のために検査を中止した。直後にX線撮影で体内磁石のずれを確認し、透視下に用手的に整復した。そこで後日、0.3Tの MRI撮影を行った。その後も聴取能は問題なく経過し、現在も装用中である。
2019/05/10 10:30〜11:10 第4会場