甲状腺手術における術後の声帯麻痺は最も知られた危惧すべき合併症である。当科では良性腫瘍を含む全症例において反回神経モニタリングに NIMパルス3.0を用いている。2011年4月から2018年3月までの8年間に当科で手術を施行した甲状腺手術は214例であった。そのうち、片葉切除術例で術前から同側声帯麻痺を認めた症例、術中に癌浸潤により反回神経を切断した症例を除いた204例を対象とした。204例中、術後当日または翌日に軽度の不全麻痺を含む声帯麻痺を認めた症例は31例(15.2%)であった。31例中7例(手術側3例、非手術側4例)は気管挿管に伴う披裂軟骨脱臼と考えられた。 NIMは反回神経の同定、剥離中の頸神経ワナとの鑑別、組織が強固な喉頭侵入部での位置確認に非常に有用である一方で、しばしば術中のチューブ位置確認や再固定等を行う必要がある。同じ8年間に当科で甲状腺腫瘍手術以外の全身麻酔下手術を約2,700例施行したが、披裂軟骨脱臼症例は1例であった。経口気管挿管に伴う披裂軟骨脱臼の頻度は0.02%程度と報告されている。これらについて考察する。
2019/05/09 17:40〜18:40 第10会場