咽喉頭粘膜炎は頭頸部癌における放射線治療では必発であるが、敗血症を発症することはまれである。また敗血症により両側の副腎出血を来すこともまれである。今回われわれは放射線治療による咽喉頭粘膜炎で敗血症を発症し、両側副腎出血に至り、急速な転帰をとった症例を経験したので報告する。患者は76歳男性の方で、喉頭癌(右声門上、 cT2N0M0、 stage II)に対して通院で放射線治療を行っていたが、照嚥下痛増強による摂食不良のため入院加療となった。入院後補液しながら NSAIDによる疼痛管理下で放射線治療を完遂したが、その翌日の朝に発熱、血圧低下を認めた。肺炎または咽頭粘膜炎による敗血症を疑い抗菌薬投与、補液を追加したが、夕方に意識レベルの低下を生じ、治療の甲斐なく同日死亡となった。病理解剖を行ったところ、両側の副腎出血、軽度の肺炎を認めた。血液培養、痰培養から共に Enterobacter cloacaeが検出された。同細菌による敗血症を発症し、その後両側副腎出血により副腎不全を併発したと考えられる。本症例に関して若干の文献考察を含め報告する。
2019/05/09 10:50〜11:50 第9会場