【はじめに】鼓室形成術において後鼓室開放や外耳道後壁削除は基本的な手技であるが、顔面神経を傷害する危険がある。
顔面神経の走行には個人差があり、症例毎の術前評価が必要である。今回われわれは、側頭骨マルチスライス CT画像を基に、その走行路を検討した。【対象】当科で中耳手術を行った患者351例、364耳で、平均年齢は53.9±18.5歳(11歳〜85歳)であった。【方法】顔面神経乳突部と鼓室部の関係について検討した。顔面神経乳突部が、鼓室部の高さより一部でも外側を走行したものを外側走行、ほぼ同じ高さであったものを鼓室部ライン上走行、内側を走行したものを内側走行とした。【結果】外側走行55耳(15%)、鼓室部ライン上走行109耳(30%)、内側走行200耳(55%)であった。【考察】外側走行耳は15%存在し、これらの症例は後鼓室開放や外耳道後壁削除を顔面神経鼓室部と同じ高さまで行った場合、乳突部を傷害することを示唆する。側頭骨マルチスライス CTによる顔面神経走行路の術前評価は、中耳手術の安全確保のために有用である。
2019/05/09 17:40〜18:40 第8会場