温度応答性培養表面を用いて作製した自己由来口腔粘膜上皮細胞シートによる再生医療は、これまで治療が困難であった難治性の疾患に対して、飛躍的な治療効果を期待できる。例えば角膜輪部上皮幹細胞疲弊症の治療や早期食道がん切除後に発症する術後狭窄の予防で多くの治療例がある。異種の細胞を用いず酵素処理直後に得られた細胞を細胞シートの作製に供するプロトコルでは、採取する口腔粘膜組織の大きさに制限があり、得られる上皮細胞の数が限られているため、一度に作製できる細胞シートの枚数に限りがある。本研究では、酵素法の代わりに初代培養としてエクスプラント培養法を用いて、先に初代培養で細胞数を増加させた後に温度応答性培養皿に播種して細胞シートを作製することで、低侵襲に、安定して移植に供する細胞シート数を確保し、かつ移植効果が得られる細胞シート作製方法を開発した。この作製方法は、患者本人の組織採取量を格段に減らし、組織採取による患者の侵襲を軽減できることから、細胞治療の普及に貢献することが期待される。
2019/05/09 11:50〜12:50 第8会場