異物を主訴に耳鼻咽喉科を受診する症例の多くは外来で簡便に摘出可能であるが、時に難渋し、摘出に全身麻酔を要することがある。今回われわれは摘出に全身麻酔が必要であった耳鼻咽喉科領域の異物症例を検討したので報告する。当院で過去10年間に外耳道、鼻腔、咽頭、喉頭の異物を主訴に受診した1,426例の中で全身麻酔下に異物を摘出した症例は13例であった。小児例が10例、成人例が3例であり、小児例が全例体動による摘出困難を理由に全身麻酔が施行されたのに対し、成人例は全例高齢者の有鈎義歯の誤飲による咽頭異物であった。有鈎義歯の誤飲は他の異物の誤飲と比べ、時に重篤な転帰を辿ることがある。摘出に際しては合併症、副損傷のリスクを踏まえ、摘出前の異物の状態、摘出方法などを迅速に判断する能力が求められる。また、義歯誤飲症例は高齢者、認知症・脳梗塞・統合失調症等の神経疾患、精神疾患などの背景があることが多く、その予防には医療従事者や周囲の介護者の義歯誤飲に対するリスク管理を意識していくことが重要であると考える。
2019/05/09 11:50〜12:50 第3会場