第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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頭頸部癌において頸部リンパ節の制御が症例の予後に大きく関わっている.早期の口腔癌N0例での潜在リンパ節転移率は20%程度であるがCTやMRI,超音波などの従来の検査では微小転移を検出することが容易ではないため,欧米では頸部リンパ節の取り扱いは“Wait and See”は薦められず,むしろ予防的頸部郭清術を行うべきであるという意見が多く,昨今ではランダム化比較試験予防的頸部郭清術(END)の標準治療化を決定づけるエビデンスも報告されている(D’Cruz AK, et al. NEJM 2015).一方で,頸部郭清術の合併症の頻度は高く,頸部郭清術を行う症例の選別には明確な指標が求められる.そのようななか,転移しやすいリンパ節の数や位置を確認できるセンチネルリンパ節ナビゲーション手術(Sentinel Node Navigation Surgery, SNNS)は口腔癌の潜在リンパ節転移の検出に適した方法である.
センチネルリンパ節(Sentinel Node, SN)とは,癌原発巣からリンパ管に入った癌細胞が最初に流れ込むリンパ節のことを指す.トレーサーとして放射性医薬品や色素を腫瘍の周囲に注入すると,腫瘍からドレナージされる最初のリンパ節が同定でき,このリンパ節がSNとみなされSNに転移がなければ,その他のリンパ節転移は生じていないと判断しリンパ節郭清を縮小もしくは省略するという理論である.
福島県立医科大学耳鼻咽喉科学講座では学内倫理委員会の承認を受け舌癌29例(Stage I: 14例,Stage II: 15例)に対しSNNSを行った.生検時にSNに転移を認めたのは陽性であったのは20%(6例)であった.SNに転移のなかった23例中2例に後発頸部転移を認めた.後発転移はいずれも顎下部で救済しえたが,その後トレーサー注入部からの放射線を遮蔽するために鉛板を挿入してSNを同定するようにしたところ,後発頸部転移を生じなくなった.SNNSを行った上記の29例に原病死はなく,5年粗生存率は96%で,以前の“Wait and See”としていた時期(84%)と比較し改善していた.
国内でSNNSは乳癌,皮膚悪性黒色腫において2003年に先進医療に適用され2010年に保険収載されている.口腔癌についても将来的な保険導入に向けて多施設共同ランダム化比較試験を実施中で,現在規定の270余例の登録が終了している.

2016/06/23 14:30〜16:00 第1会場

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