第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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1949年Henchらがコルチゾンのリウマチに対する有効性を報告して以来,各種のステロイドが合成開発され,アレルギー疾患にも臨床応用され,高い評価を得ている.この間,その機序,有効性,安全性などに関する多くの知見が見いだされ,局所ステロイドは局所作用に優れ,全身的な副作用の発生が少ないことからアレルギー性鼻疾患においても臨床応用されている.近年,アレルギー炎症にかかわるかなりの部分の分子機構が解明され,局所ステロイド薬の薬理作用はa)抗炎症作用,b)抗アレルギー作用,c)免疫抑制作用,d)細胞増殖抑制作用,など多彩であることが報告されている.
アレルギー性鼻炎診療ガイドラインでは,重症度が中等症以上のくしゃみ,鼻汁型および鼻閉型のいずれにおいても局所ステロイド剤の使用が適応となっている.通年性アレルギー性鼻炎に対して,局所ステロイドは症状の緩和に有効でQOLの改善が期待できる.スギ花粉症を含めた花粉症では,花粉飛散情報や患者の例年の症状を参考にして治療計画を立てることが必要で,初期治療が特に重要と考えられる.スギ花粉の飛散数増加に伴い高感受性群および低感受性群のいずれも鼻粘膜の過敏性が亢進するが,初期治療はこれを抑えるために施行されている.花粉症に対しても,大量飛散が予測される場合にはステロイドを初期治療薬としてスギ花粉飛散初期から併用し,シーズン中も継続,そして花粉の飛散が終了するまで続けることが症状抑制に効果があると考えられる.また,花粉飛散期においても,局所ステロイドは鼻症状の抑制とQOLの改善に有効であった.副作用は全身ステロイド薬と比較して常用量ではほとんど認められないが,鼻刺戟感,乾燥,鼻出血などが報告されている.
小児アレルギー性鼻炎も増加傾向で,その症状は,成人と異なってくしゃみ,鼻汁,鼻閉などの典型的な症状だけでなく,いびき,口呼吸,鼻すすりなど小児に特有な症状も多い.小児のアレルギー性鼻炎を的確に診断し,適切に治療を行うことによって症状を抑制するだけでなく,日常生活のパフォーマンスを改善し,QOLを向上させることが可能となる.①小児のアレルギー性鼻炎の疫学と増加の原因,②診断と薬物や免疫療法を含めた治療戦略をどう考えるか,③小児のアレルギー性鼻炎の予防と早期介入にはどのようなものがあるのか,④小児と成人のアレルギー性鼻炎への対応の違いは何か,⑤小児のアレルギー性鼻炎と他のアレルギー疾患との関連はどうなっているかなどに関する最新の知見について紹介したい.

2016/06/24 12:40〜13:40 第2会場

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