第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

タイトル

はじめに:扁桃周囲膿瘍の多くは適切な抗菌薬治療と穿刺あるいは切開による排膿によって速やかに治癒する.しかし,時にこれらの治療で十分な効果が得られず,膿瘍扁桃摘出術(膿瘍扁摘)を必要とする症例や,再発を繰り返すため待機的扁桃摘出術が行われる症例がある.当科ではこれまで扁桃周囲膿瘍に対して積極的に即時膿瘍扁摘を行うとともに,膿瘍の局在部位や形状別の臨床症状,さらに抗菌薬の組織移行について検討してきた.そこで,それらの成績をまとめ,扁桃周囲膿瘍の病態および膿瘍扁摘の適応や利点について述べてみたい.
対象と方法:当科で治療を行った扁桃周囲膿瘍症例をCT所見から上極型と下極型,Oval型とCap型に分類し,その臨床所見の相違点を検討した.また,膿瘍扁摘直前にガレノキサシン(GRNX)を内服させ,膿瘍,扁桃組織,血清中への組織移行を観察し,扁桃周囲膿瘍の性状や臨床症状と比較した.
結果:上極型と比較して下極型は高齢者の発症頻度が高く,咽頭の発赤や口蓋垂の偏位,開口制限など本症に特徴的とされる症状が少なかった.CT所見ならびに手術所見の検討では,Oval型は扁桃被膜内に,Cap型は扁桃被膜外に膿瘍が存在する頻度が高いことが分かった.また,下極・Cap型では,急性喉頭蓋炎を合併し,気管切開を必要とすることが多く,咽頭粘膜間隙を越えて膿瘍形成を生じる症例もみられた.GRNXの血清そして健側扁桃組織への移行は比較的良好であったが,患側扁桃および膿汁への薬物移行は低下していた.また,CRP値が高値で,病能期間が短く,膿瘍径が大きいCap型の症例ではGRNXの扁桃や膿汁への組織移行がさらに不良であった.
結論:下極・Cap型では気道管理が重要であり,重症例では膿瘍扁摘を考慮する必要があると思われる.

2016/06/24 8:10〜9:00 第2会場

操作