第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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鼻粘膜の粘液層はゲル層である外層粘液とゾル層である線毛間液から構成される.線毛間液はイオントランスポートによる水とイオンの分泌によって維持され,外層粘液は上皮中の杯細胞と固有層の粘膜下腺から分泌される分泌液に由来する.線毛打は線毛間液中で行われ,線毛の先端で粘弾性を有する外層粘液を捉えて線毛打の方向へ送る,粘液線毛輸送機能を有している.
粘液層は生体防御の第一線として,吸気の加湿・加温,粘膜の保護,有毒ガスの吸着と中和などの物理的作用とともに,異物を捕捉し排除する粘液線毛輸送機能の一端を担い,遊走した炎症細胞や炎症メディエーターによる生体反応の場になっている.粘液の主要な構成成分であるムチンは,MUC遺伝子で規定されるコア蛋白に多数の糖残基が結合し,重合しながら複雑な集合体を形成している.正常状態の分泌液は少量であるが,刺激や炎症が加わると粘液産生が増加し,腺細胞や杯細胞の増生が生じる.過剰な粘液産生は,粘液線毛輸送機能の破綻や炎症の遷延化・慢性化を引き起こすとともに,鼻漏・後鼻漏や鼻閉を生じて患者さんを苦しめる.
本セミナーでは,鼻副鼻腔炎における粘液過分泌について,粘液の主要な構成成分であるムチンの性状と産生機序,粘液の有する抗炎症作用について概説し,適切な制御・治療法について考察する.

2016/06/24 12:40〜13:40 第1会場

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