第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

タイトル

黒野会長から与えられたテーマは「再発例・難治例への対応」である.難治といってもさまざまな意味がある.例えば頭頸部癌でいえば,下咽頭癌は難治である.しかし,診断法は一定しているし,現在の治療法での限界を感じながらも,どの施設でもほぼ同様のことを施行しているものと思われる.ここでいう難治とは,診断法や治療法が十分に確立されておらず,文字通り我々が難渋している症例である.頻度の高い症例であるが,そのなかで治癒困難例が存在する疾患や,元来頻度が低く,治療法そのものが確立されていない症例がこれに含まれると考えられる.例えば副鼻腔炎はよくある疾患であるが好酸球性副鼻腔炎は難治である.そのため,普通の副鼻腔炎と同様の治療ではだめで,治療に工夫が必要である.好酸球性副鼻腔炎のように症例数が多いものはまだよいが,頻度の低い難治例では治療法が確立されていないことも多く,不十分な治療計画の下では痛い目にあうことがある.「苦いカルテ」はよい教訓にはなるが,残念ながらエビデンスに発展することは少ない.一方,再発例も一般には厄介である.しばしば再手術となるが,新鮮例の手術とは全く異なるものと言っても過言ではない.そうなると,再発させない安全,確実な初回手術が求められることになる.
本パネルディスカッションでは,数例の難治症例を提示して,診断から治療に至るまでしっかり議論していきたい.エビデンスが確立されていない例もあり,討論のなかでさまざまな工夫が飛び出してくるかもしれない.学会におけるシンポジウムやパネルディスカッションは発表前にストーリーが出来上がっているものも散見されるが,本パネルでは臨場感溢れたものにしていきたい.難治例を4~5例用意する予定であるが,議論が盛り上がれば数例で終わってしまうかもしれない.
パネリストには中堅で,現在臨床の現場において第一線で取り組んでおられる先生方を選ばせていただいた.山形大学の伊藤吏先生,北野病院の坂本達則先生,鹿児島大学の大堀純一郎先生,大阪医科大学の櫟原崇宏先生にパネリストとして登壇していただき,活発な討論が行われることを期待している.聴衆の先生方には明日からの臨床に役立てるだけでなく,十分に討論を楽しんでいただければ幸いである.

2016/06/24 11:00〜12:30 第1会場

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