第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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咽喉頭異常感は耳鼻咽喉科の日常診療でしばしば遭遇する症状である.具体的には異物感,違和感,イガイガ感,チクチク感,痰が絡んだ感じなどと表現される.これにはさまざまな要因が関わっているが,特に高齢者では悪性腫瘍の鑑別も含めて適切な対応が求められる.咽喉頭異常感の原因は大きく,咽頭・喉頭の局所性病変によるもの,咽頭・喉頭周辺の病変によるもの,および心因的要因によるものに分けられる.
1)咽頭・喉頭の局所性病変によるもの
急性もしくは慢性の咽喉頭炎が代表的であり,喉頭内視鏡検査で粘膜発赤や浮腫などを認める.喉頭アレルギーはアトピー素因,披裂部粘膜の蒼白浮腫性腫脹,ヒスタミンH1拮抗薬またはステロイドによる症状の改善などが参考になる.胃食道逆流に伴う咽喉頭異常感も慢性咳嗽を伴うことが多く,局所所見では披裂部粘膜の発赤や浮腫性腫脹,輪状後部から梨状陥凹にかけて透明な液体貯留などを認める.高齢者では潜在的な嚥下障害により梨状陥凹に唾液残留をきたして,違和感や痰が絡んだ感じなどにつながることもある.また,器質性病変としては喉頭肉芽腫や喉頭癌・下咽頭癌などに注意が必要である.
2)咽頭・喉頭周囲の病変によるもの
頸椎骨棘増殖症(Forestier病)は高齢の男性に多く,咽喉頭異常感のほか,嚥下時の食塊通過困難感や,時に呼吸障害・発声障害なども呈する.内視鏡検査にて咽頭後壁の粘膜膨隆を認め,頸部側面単純X線検査やCT検査で頸椎前方へ突出する骨性病変を確認することで,診断は比較的容易である.茎状突起は側頭骨錐体の下面から前下内方に延びているが,これが異常発育または形態異常のために通常より長くなると,咽喉頭部の違和感のほか,頭痛,放散性耳痛,嚥下痛などを呈することがある.口腔内からの扁桃窩周辺の触診により骨様索状物が触知される.また,頸部の3D-CTが診断に有用である.
3)心因的要因に基づくもの
中年以降の女性に比較的多い.不安・緊張,うつ,ヒステリー性の転換反応などによることが多い.咽喉頭以外の部位の不定愁訴を伴うことが多く,症状の部位が漠然としていることなどが参考になる.
本セミナーでは,これら疾患の診断のポイントと咽喉頭異常感への対応について述べる.

2016/06/24 10:00〜10:30 第1会場

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