第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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鼻漏,後鼻漏の原因としては,一般的にアレルギー性鼻炎,副鼻腔炎が多く,症状の軽減,治癒のためにはこれらの疾患の診断と治療が重要である.高齢者においても,まずはこれらの鼻副鼻腔炎疾患の鑑別診断を行うべきである.しかし,必ずしもアレルギー性鼻炎の抗原検索等の検査や副鼻腔CTなどの画像検査でも明確な診断に至らない例が高齢者では少なくない.こうした時に,キーワードとなるのが,「老人性鼻漏」「真正後鼻漏と後鼻漏感の鑑別」である.
まず,鼻漏についてであるが,老人性鼻漏ではどちらかといえば粘性が低下し漿液性(水様性)鼻汁分泌過多が主である.こうした症状で「頻繁に鼻をすすっている」,「鼻をかんでばかりいる」といった訴えが多い.しかし,感冒様の症状やアレルギー性鼻炎の時に見られるくしゃみや鼻閉などの症状に乏しく発熱もなく概ね元気であることが多い.そして,アレルギー性鼻炎の諸検査で陰性であるにもかかわらず,抗ヒスタミン薬の内服,特に抗コリン作用を期待しての第1世代抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイドが効果も乏しいまま長期に使用されている例が少なくない.
慢性副鼻腔炎では一般的に粘性,あるいは粘膿性の鼻漏,後鼻漏が通常認められる.鼻茸を認めることもある.副鼻腔CTなどの画像診断で副鼻腔陰影を確認する.副鼻腔陰影を認めればマクロライド療法が有効である確率が高いが,高齢者ではたとえ陰影があっても実は「無症候性副鼻腔炎」としての陰影である可能性も若い世代に比べて高く,マクロライド療法に対する反応が不良で原因が他にあることもある.
困った時に何を考えて何をなすべきか.一般に高齢者では生理的な鼻粘膜の委縮や粘液線毛機能の低下,その結果として鼻腔内の適度な加温加湿機能や呼気の水分再吸収能の低下を引き起こして症状の原因となっている可能性が考えられる.鼻粘膜や咽頭部の粘膜は乾燥傾向に傾きやすい.鼻咽腔ファイバーで観察すると,真正後鼻漏よりも後鼻漏感が考えられる例もある.こうした,例では抗コリン作用を期待しての薬物投与や鼻噴霧用ステロイドはかえって良くない.加温加湿機能を期待しての温熱療法,温生食による鼻洗浄の習慣化を指導することも考慮されるべきである.こうした点などを「ワンポイントアドバイス」としてお示ししたい.

2016/06/24 9:30〜10:00 第1会場

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