第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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平成25(2013)年国民基礎健康調査によると,めまいの有訴者率は全年齢では1,000人に対して男性13.5人,女性31.2人であるのに対して,65歳以上の高齢者では男性27.9人,女性45.4人と,高齢者においてはめまいの有訴者率が高率になることが報告されている.75歳以上の高齢者の30%以上が体平衡の異常を訴えているとする報告もある.さらに,高齢者におけるめまい・平衡障害は,転倒のリスクファクターの一つであることが知られている.65歳以上の高齢者を対象に,転倒のリスクファクターについて検討を加えたメタアナリシスによると,めまい・平衡障害の既往があると転倒のリスクが約2倍になり,脳卒中の既往と同程度のリスクファクターであることが報告されている.本セミナーでは高齢者に特有なめまい疾患の病態とこれへの対応について述べる.
耳鼻咽喉科疾患:良性発作性頭位めまい症(BPPV),メニエール病,内耳炎,突発性難聴,前庭神経炎などがある.これらのうちBPPVは,高齢者においても高い頻度を示す.
脳血管自動調節能:脳の機能を正常に保つためには,脳への血流量が安定して供給されることが不可欠である.血圧変動によって脳血流が過度に減少あるいは増加しないように,脳血管自動調節能という仕組みがある.高齢者では血管病変による血流自体の低下だけでなく,脳血管自動調節能が低下し,血圧降下により容易に脳循環が障害され,その結果としてめまいを生じやすくなる.
薬剤性めまい:高齢者ではめまいの原因として薬剤を考慮する必要がある.高齢者は,①老化に伴い内耳障害が潜在的に存在する,②様々な疾患の羅患率が高くなるため,多くの薬剤が使用されることが多い,③老化による腎障害を伴うことが多い,④若年者とは薬剤に対する感受性が異なる,などの理由による.薬剤によってめまいを生じる機序として,①低血圧などに伴う脳循環障害,②中枢神経作用,③内耳障害などがある.①の機序による例としては降圧薬,②の機序による例としては,フェニトイン,minor tranquilizer,抗うつ薬など,③の機序としてはアスピリンやアミノ配糖体,シスプラチンなどの抗癌剤などがある.③の内耳障害の場合は両側前庭機能が障害されることが多く,中枢での前庭代償が成立しがたく,高齢者の運動機能の低下と相まって,めまい症状が改善しにくい傾向を示す.

2016/06/24 9:00〜9:30 第1会場

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