第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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スギ花粉症は国民の4分の1以上が罹患し,一旦発症すると自然寛解は一部の中高年者を除いてほとんど認められない疾患である.発症の低年齢化も問題になっており,スギ花粉症の有病率は増加の一途をたどっている.免疫療法は自然経過を変えることのできる根本治療であり,スギ花粉症に対しても以前より皮下注射で行われてきた.2000年には標準化エキスが市販されたが,注射の痛み,頻回の通院,頻度は少ないながらもアナフィラキシーなど重篤な副作用があることから,患者側・医療従事者側ともに負担が大きく施行症例数は伸びなかった.2000年代にスギ花粉症に対する舌下免疫療法が代替の治療法として一部の施設で臨床試験として検証され,2010年から2012年までの製薬メーカー主導による第3相臨床試験を経て,2014年10月より保険診療として開始された.
本治療は現在まで約4万人を超える患者が治療を受けており,発売開始後1年は2週間処方の制限があったが,2015年10月からは1ヵ月処方も可能になった.12歳以上のスギ花粉症患者が治療対象となる.本治療法は2週間の増量期の後に,3週目からは維持量として2000JAUを連日投与するものであり,最低でも2年の治療継続が必要である.第3相臨床試験の結果では,治療開始約3~5ヵ月後の1シーズン目でも有意な症状抑制効果を認めたが,2シーズン目にはさらに効果は増大していた.副作用は13.5%の症例に認めたが,そのほとんどは口腔局所症状を含めた軽症のものであり,舌下投与を継続したままでも未治療で回復していた.また,副作用の多くは治療開始1ヵ月以内に認めるため,スギ花粉飛散期に治療を開始することは避けるべきである.本治療においてアナフィラキシーが副作用として起こる可能性はかなり低いと考えられるが,対応については熟知しておく必要がある.実際の治療に際しては,患者背景による効果や副作用の出現の違いに関する知識,気管支喘息合併例,高齢者および妊婦などを含めた適応症例の判断,副作用出現時の対応や休薬の指示,治療が奏功しない場合の治療継続の判断などが必要になる.ケース・バイ・ケースの判断が必要になる場合も多いが,本講演では治療の施行に際して基本的な部分を概説し,これまでの実臨床での治療の現状についても,患者の満足度や治療アドヒアランスなどを含めて情報を提供したい.

2016/06/23 17:30〜18:30 第2会場

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