第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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小児期にアレルギー性鼻炎の治療をしないと気管支喘息の発症率が増加し,気管支喘息が寛解しても気道過敏性が持続し,鼻閉のある小児アレルギー性鼻炎を放置すると成人型の気管支喘息に移行しやすくなる.成人喘息合併患者ではスギ花粉による喘息症状の悪化がみられるなど,上気道と下気道のアレルギー病態形成が互いに連関するため,“One airway, one disease”の概念で,両者を念頭に置いた治療が重要である.
バイオマーカーや遺伝因子,環境因子との関連などアレルギー疾患をフェノタイプに分けて治療に役立てようとする試みが盛んに行われている.今回は“One airway, one disease”の概念で,呼気NO濃度(鼻腔NO濃度,鼻呼気NO濃度,口呼気NO濃度),血清バイオマーカーに着目し,抗ロイコトリエン薬を中心とした薬物療法におけるアレルギー性鼻炎の治療効果を予測するフェノタイプ(エンドタイプ)分類について検討した.
抗ロイコトリエン薬は鼻閉に対する効果が高いが抵抗性を示す症例もある.スギ花粉症初期療法の無作為化・3アーム試験において,抗ロイコトリエン薬初期療法では,飛散前呼気NO濃度が50
bpp以上のフェノタイプが存在し,50bpp未満のフェノタイプに比べ,飛散ピーク時の鼻閉スコアは有意に高かった(P<0.01).抗ロイコトリエン薬は鼻汁に対する効果が認められている.血清バイオマーカーによる検討で,飛散ピーク時の鼻汁に対する抵抗性を治療前に予測可能なフェノタイプが存在した.
花粉症および通年性アレルギー性鼻炎の増加,低年齢化,および重症化は,アレルギーマーチにおける気管支喘息などアレルギー疾患の病態に大きく影響する.アレルギー性鼻炎は,気管支喘息,アトピー性皮膚炎,食物アレルギーに比べて寛解率が低く,抗ロイコトリエン薬,抗ヒスタミン薬,鼻噴霧用ステロイド薬,手術療法,抗原特異的免疫療法の効果をよく理解し,様々な治療戦略を駆使して,アレルギー性鼻炎のフェノタイプと“One airway, one diseaseを念頭に治療する必要がある.

2016/06/23 12:10〜13:10 第2会場

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