第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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側頭骨の評価にコーンビームCT(CBCT)を日常的に使っている.撮影は座位で行われるため小児では難しいこともあるが,従来のmultidetector-row CT(MDCT)に比べ被曝量が少なく空間分解能も大きな遜色はない.手術適応や鼓室形成術前の評価,術後のフォローなど一般的な使用法から人工中耳・内耳の術後評価にいたるまで,その応用範囲は広い.その一端を紹介し諸賢の参考にしたい.
中耳真珠腫手術と術後のフォローアップ
当科では外耳道後壁保存型の術式をとることが多く,天蓋と外耳道との間隔(乳突削開の難易度),蜂巣発育と含気,真珠腫の進展範囲,耳小骨の破壊程度,半規管瘻孔の有無,顔面神経走行,S状静脈洞,高位頸静脈球の有無などを画像評価し手術に臨んでいる.手術では真珠腫摘出後に再発防止策として鼓室内換気路の確保と薄切軟骨による側壁形成(scutum plasty)を重視している.術後は,遺残真珠腫のフォローアップ目的にも使っている.CBCTはMDCTに比べ,ややコントラスト分解能に劣るが,いずれの目的にも使用可能である.
Bone Anchored Hearing Aid(BAHA)の位置決め
通常の鼓室形成術で改善できない伝音・混合難聴のある患者の中で,骨導が比較的保たれた症例がBAHAの良い適応になる.通常,外耳口から50~70 mmの半円上で耳介上端よりも下方の頭蓋骨にチタン製のインプラントを移植し,皮膚から頭を出したインプラントに骨導補聴器を装用し使用する.インプラントに適した骨厚,縫合線の有無をチェックするのにCBCTを術前に撮影している.方法は,移植部皮膚にマジックで印を付け,トローチ状のマーク(工作用粘土を焼き固めたもの)を両面テープで固定,撮影する.この情報を元に皮切位置,使用インプラントを決めている.CBCTは,場所や角度を使用者が自由に評価できるため使い勝手がよい.
Vibrant Soundbridge(VSB)
VSBは,円筒状の振動子(Floating Mass Transducer, FMT)を正円窓に密着させ内耳液を振動させる方式をとっている.減衰が少ないためBAHAに比べ,より悪い骨導閾値までをカバーできる.術前の画像検査では正円窓へのアプローチが可能かどうかを,術後はFMTと正円窓の適合を評価する必要がある.CBCTはこの目的にも使用可能で,最近,術中に評価できる装置も開発されている.

2016/06/23 12:10〜13:10 第1会場

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