第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

IgG4関連疾患は,血清IgG4の高値と病変部へのIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする新しい疾患概念である.自己免疫性膵炎(AIP)はすでにIgG4関連疾患として広く知られている疾患で,他に後腹膜線維症,間質性腎炎,間質性肺炎,炎症性偽腫瘍等も報告されており,いずれも本邦から発信された概念である.海外においても注目され始めた疾患であるが,診断においてIgG4陽性形質細胞浸潤像に重きを置き,病理組織診断に偏っている傾向は,本邦の研究者と意見の相違がみられる.耳鼻咽喉科領域では,従来からMikulicz’s disease(ミクリッツ病)とKüttner’s tumor(キュットナー腫瘍)と呼ばれる多くの例がIgG4関連唾液腺病変に相当する.診断には臨床所見,血液検査,組織学的検査が必要となり,画像検査も診断の一助となる.
[診断]
IgG4関連疾患は複数臓器にみられるため,IgG4関連疾患包括診断基準が2011年に提唱されている.またIgG4関連ミクリッツ病については,日本シェーグレン症候群学会で示された2008年IgG4関連ミクリッツ病の診断基準に基づいて診断が行われている.
臨床所見はIgG4関連唾液腺病変については両側涙腺,耳下腺,顎下腺の腫大を示す例や,涙腺と顎下腺の2腺の腫大を示すミクリッツ病と顎下腺のみの腫大を示す例(いわゆるキュットナー腫瘍)がある.IgG4関連鼻副鼻腔炎と考えられる例,他臓器のIgG4関連疾患を合併する例がある.疾患関連性は未だ不明であるが,喘息,鼻アレルギー,嗅覚障害を合併する例や,癌腫を合併する例もみられる.
血清学的には高IgG4血症(>135
mg/dl)がみられる.病理検査は涙腺,耳下腺,特に顎下腺生検や摘出組織により施行されることが多い.著明なリンパ球およびIgG4陽性形質細胞浸潤,リンパ濾胞の形成,高度の線維化がみられる.IgG4関連ミクリッツ病診断基準ではIgG4/IgG陽性細胞比は50%以上とされる.エコー検査では顎下腺,涙腺は低エコー所見として示され,IgG4関連ミクリッツ病を疑った場合は有用な検査の一つである.
[治療および病因]
副腎皮質ステロイド治療により,IgG4関連疾患は唾液腺病変に限らず全ての臓器の病変が速やかに改善することから,ステロイド内服が標準的に行われる.
IgG4関連唾液腺病変の病因は未だ不明な点が多く解明されていない.ウイルスや細菌による感染症や,自己免疫疾患,アレルギー疾患なども考えられているが特定の原因の解明はIgG4研究会を中心に多くの研究者が現在成果を上げている.本セミナーでは鑑別疾患も含め分かりやすく解説したい.

2016/06/23 11:00〜11:30 第1会場

操作