第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)はANCA関連血管炎によって生じる中耳炎で,その特徴は①抗菌薬および鼓膜換気チューブが無効の難治性中耳炎を呈し,鼓室・乳突洞に貯留液または肉芽を認める.②聴力では,進行する骨導域値の上昇を認める.③血清学的にはPR3-ANCAまたはMPO-ANCAが陽性を示したものが80%程度ある.④中耳または乳突洞の生検では炎症性肉芽組織を認めるが,血管炎または巨細胞などのANCA関連血管炎に特徴的所見を認めにくい.⑤顔面神経麻痺が40%,肥厚性硬膜炎(下位脳神経症状)が25%程度認められる.⑥適切な治療を行わないと進行し,全聾になったり,脳底動脈の血管炎によるクモ膜下出血に及ぶこともある.
早期診断,治療が重要であるが,初診時に他病変がなく,ANCAが同定されないことも多く,典型的な病理所見も得られないことから,現行の多発血管炎性肉芽腫症,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症,顕微鏡的多発血管炎の診断基準を満たさない症例が多い.治療は,ステロイドを含めた免疫抑制療法が必要であるが,診断がなされないため免疫抑制療法を開始できない,もしくは,現行の診断基準に当てはまらないので膠原病内科などに相手にされないといったことが問題となっていた.このような背景から,本疾患は2012年の日本耳科学会のシンポジウムにとりあげられ,診断基準(案)も同時に提唱された.また,2013年,日本耳科学会にANCA関連血管炎性中耳炎全国調査ワーキンググループ(OMAAV-WG)が発足し,グループ内での90症例を集積し,議論が積み重ねられ,診断基準(案)のブラッシュアップが行われた.さらなる大規模なスタディーとして,2014年に全国の耳鼻咽喉科を対象とした調査がなされ,297例の症例をもとに本疾患の病態がさらに明らかにされ,2015年に最終の診断基準が提案されている.
本セミナーでは,OMAAV全国調査から得られた知見を概説し,本疾患の診断基準について解説する.また,本疾患の治療も含めた取り扱い,聴力予後,生命予後についても解説する.

2016/06/23 9:00〜9:30 第1会場

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