第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

【はじめに】顔面神経麻痺は,中枢性麻痺と末梢性麻痺に大別される.全顔面神経麻痺の90%以上は末梢性麻痺で,Bell麻痺,Ramsay Hunt症候群(以下Hunt症候群),外傷性麻痺,耳炎性麻痺などの頻度が高い.一般的にBell麻痺は予後良好な疾患で,約70%は自然治癒する.これに対して,Hunt症候群は約30%しか自然治癒しない.今回我々は末梢性顔面神経麻痺223症例の臨床的検討を行った.
【対象と方法】2011年4月から2015年6月までに当科を受診した末梢性顔面神経麻痺223症例について臨床的検討を行った.顔面麻痺を主訴に受診した例を対象とした.男性104例,女性119例,4~92歳(中央値56歳),発症から初診までの平均日数は3.3日,麻痺側は右側111例,左側112例,Bell麻痺が184例(82.5%),Hunt症候群が38例(17%),外傷性が1例(0.5%)であった.治療効果判定は,柳原法で36点以上まで回復した症例を治癒,それ以外を非治癒とした(日本顔面神経研究会治療効果判定委員会1995).神経興奮性検査(NET)において健側と患側の閾値差が3.5 mA未満のものは予後良好,3.5 mA以上もしくはスケールアウトは予後不良と判定した.
【結果】治癒率はBell麻痺87%(184例中160例),Hunt症候群71%(38例中27例),(P=0.014),両群間の最終表情筋スコア(P=0.013)は共に有意差を認めた.ステロイド投与群とステロイド非投与群の治癒率は,それぞれ85%(196例中166例),81%(27例中22例),抗ヘルペスウイルス薬投与群と非投与群の治癒率は,それぞれ83%(139例中116例),86%(84例中72例)であり共に有意差を認めなかった.NETを施行した117例のうち,治癒率は予後良好群で86%(107例中92例),予後不良群で40%(10例中4例)と有意差を認めた(P<0.001).全223例中9例(0.04%)に再発を認めた.顔面神経減荷術は2例に施行し,現在いずれも術後6ヵ月で麻痺は改善傾向である.

2016/06/24 14:26〜14:44 P52群

操作