第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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X年9月30日夕方から「突然の頭痛,左上肢痺れ,話しにくい,嚥下しにくい」を主訴に救急外来を受診した43歳男性症例である.既往歴なし.患者は独身のソフトエンジニアであった.現症は意識清明,歩行障害なし,上肢バレー徴候陰性,右軟口蓋挙上は弱くカーテン徴候あり,右口角下垂と水漏れ軽度あり,流涙なし,閉眼可能,片眼つぶりは良好であった.柳原法は4-4-4-2-4,2-4-4-2-4(36/40),軽度のふらつきを自覚していた.初診時診断医は耳鼻咽喉科医師であった.中枢性障害が疑われ頭部CT・MRI(いずれも単純)を施行したが,明らかな異常は指摘されなかった.右ハント症候群または複数の脳神経障害が疑われ脳神経外科医に診察依頼した.しかし,この時点では中枢性障害は否定的との診断に到り耳鼻咽喉科での入院加療となった.ステロイドパルス,抗ウイルス薬治療を行い右顔面神経麻痺症状は改善したが,左上肢痺れ,僅かな呂律困難,嚥下困難(水分摂取不可能),嗄声,吃逆は改善しなかった.再度中枢性障害を疑い神経内科に依頼した.この時も明らかな中枢性障害は否定的であったため耳鼻咽喉科での治療継続となった.入院5日目より左下肢が冷たい感覚を初めて訴えた.入院6日目からリハビリテーション(歩行・嚥下・筋力回復等)が開始された.この時点で柳原法は40/40であった.入院12日目頃から左手に血が通っていないような感覚と頸部より下の左側全体が温度を全く感じないと訴えたため,再度脳神経外科・神経内科へ依頼した.入院18日目に施行したCT・MRIにて右椎骨動脈解離と右延髄外側の脳梗塞が見つかり神経内科転科となった.眩暈診療では1年に数件だが,末梢性か中枢性かが分かりにくい患者と遭遇する.この症例を教訓とし,今後の診療に生かす必要があると考えられたため,今回若干の文献的考察も加えながら報告する.

2016/06/24 14:26〜14:44 P52群

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