第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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〈目的〉顔面神経麻痺の予後予測因子について検討する.
〈対象と方法〉未治療顔面神経麻痺患者の診療録を後方視的に検討した.麻痺の重症度は柳原法で評価し,36点以上に回復した患者を治癒とした.なお,外傷性および耳炎性については除外した.
〈結果〉2010年から2014年までに当院で治療したBell麻痺112例(B群),Hunt症候群39例(H群)を対象として検討を行った.B群およびH群の治癒割合はそれぞれ85%,62%で,有意にB群で良好であった(P<0.01).初診時柳原法スコア20点以上の症例は,全体およびH群で有意に予後良好であり(P<0.01, P=0.03),B群では有意ではないが予後良好な傾向がみられた(P=0.09).アブミ骨筋反射検査で患側波形ありの症例は,全体,B群,H群のいずれにおいても有意に予後良好であった(P<0.01, P=0.01, P<0.01).ENoG-CMAP値10%以上の症例は,H群では有意に予後良好であったが(P=0.04),全体およびB群では治癒割合に有意差はなかった(P=0.1, P=0.6).治療開始前末梢血好中球リンパ球比(NLR:Neutrophil-Lymphocyte Ratio)3.0未満の症例は,全体,B群,H群のいずれにおいても有意に予後良好であった(P<0.01, P<0.01, P=0.04).
〈考察〉末梢血NLRは予後因子となりうる可能性が示されている因子の一つである(Bucak A, Laryngoscope 2014).本研究でも末梢血NLR<3.0は有意に予後良好であり,顔面神経麻痺の予後予測に有用と考えられた.なお,以前から予後予測因子とされている初診時柳原法スコア,アブミ骨筋反射は従来の報告どおり顔面神経麻痺の予後予測において有用と考えられた.

2016/06/24 14:26〜14:44 P52群

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