第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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セツキシマブ(以下,Cmab)は,ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)を標的とするモノクローナル抗体であり,2012年12月に本邦での頭頸部癌に対する治療薬として承認された.Cmabによる有害事象は,従来の頭頸部癌に対する標準的治療薬であるシスプラチンよりも軽微であるとされているが,間質性肺疾患等の重篤な有害事象の報告もあり注意が必要である.Infusion reactionやざ瘡様皮疹等の有害事象と比較して,Cmabによる間質性肺疾患の発症率は1%前後と低いが,一旦発症すると致命的となりやすい.今回われわれは,当院における頭頸部癌に対するCmabの使用と間質性肺疾患の発症について検討を行ったので,実際に間質性肺疾患を生じ死亡した症例の提示と,若干の文献的考察を加えて報告する.
症例は,72歳男性.中咽頭癌(cT1N2bM0 Stage4a)に対して,X年5月8日にCmab初回投与,5月11日から放射線治療を開始した.6月23日より38.5°Cの発熱を認め,24日より呼吸困難が出現した.胸部CT検査にて間質性肺疾患を疑う所見を認めたため,放射線照射は中止となった.6月26日に精査加療目的で呼吸器内科に転科しステロイドパルス療法,好中球エラスターゼ阻害薬,免疫抑制薬による治療を行ったが,呼吸状態の改善はみられず,7月15日に死亡した.
Cmabによる間質性肺疾患の初期症状は発熱,乾性咳嗽,SpO2低下等,非特異的な症状で見逃されやすく,治療開始時期が遅れやすい.また本症例のように,間質性肺疾患による症状発現後,比較的早期に治療を開始された症例でも死亡に至る例が存在する.さらにCmabによる間質性肺疾患の発症率は,他領域と比較し頭頸部領域では高い傾向にある.頭頸部領域ではより一層の注意が必要であるとともに,国内大規模調査による危険因子についての早急な検討が望まれる.

2016/06/24 13:50〜14:26 P51群

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