第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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2012年12月に日本での頭頸部癌治療に分子標的薬Cetuximabが承認された.当院では2013年5月よりCetuximabを導入し,放射線治療を行う場合や再発転移性頭頸部癌において化学療法を行う場合に併用して使用している.
CDDPなどの従来の殺細胞性抗がん剤と比べ分子標的薬は薬剤性肺障害の頻度が高い傾向が一般的にはある.実際CDDPによる肺障害のリスクは低く(頻度不明),単剤での報告は見受けられないが,Cetuximab投与下における間質性肺炎の発現率は全例調査によると1.2%認めている.分子標的薬の中ではCetuximabに伴う薬剤性肺障害は高頻度ではないが,全例調査でも発症例のうち41.7%は死亡しており重篤な経過をたどるケースも少なくはない.
当院では2013年5月から2015年9月までにCetuximabを76例で使用し,うち3例(3.9%)が間質性肺炎と考えられる所見を呈した.今回,当院でCetuximabを使用し,間質性肺炎を呈した例の対応・経過を報告する.
3例はいずれも局所進行頭頸部扁平上皮癌で,全例導入化学療法後にCetuximab併用放射線治療を行った症例で,重症例1例/軽症例2例である.発症時期はCetuximab投与開始1週間後1例,6週間後1例,13週間後1例で,発症時期に一定の傾向は認められなかった.2例はCetuximab投与中であったため,ステロイド使用なく中止のみで自然軽快を示した.1例は予定Cetuximab投与終了4週間後に出現し,ステロイドパルス療法施行し酸素化は改善をしたが,経過中にDIC・脳梗塞を併発した.いずれも65歳以上の高齢・喫煙者ではあったが,他のリスク因子は認めなかった.
薬剤性肺障害は早期発見し治療介入を行うことが非常に重要である.Cetuximab投与における肺障害を呈するリスク・発症時期は明確なものはなく,投与中だけではなく投与後も定期的な胸部レントゲン撮影や咳嗽などの呼吸器症状の評価を行うことが必要と考える.

2016/06/24 13:50〜14:26 P51群

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