第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】根治切除不能な甲状腺癌に対する治療選択肢は限られており,術後再発や放射性ヨウ素療法で病変が制御不能となった分化型甲状腺癌および甲状腺未分化癌に対する標準治療は存在しなかった.2015年5月に認可承認されたレンバチニブメシル酸塩(レンビマ®)は,血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)や線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR),血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)などの腫瘍血管新生あるいは腫瘍悪性化に関与する受容体型チロシンキナーゼ(RTK)に対する選択的阻害活性を有する.今回我々は,甲状腺癌の術後再発3例(当科手術1例)に対しレンビマ®を投与,その有効性につき報告する.
症例1)術後局所再発で食道に腫瘍性潰瘍形成した70歳女性.主訴:呼吸しにくい・ものが飲み込みにくい.追加手術治療を提示するも同意が得られず,気管切開,胃瘻造設も拒否された.頸部皮膚へ腫瘍が進展し自壊し,壊死組織が流れ出るような状態であった.レンビマ®の副作用についても説明のうえ同意が得られたため,導入時の副作用コントロール目的で入院加療.出血中の食道潰瘍があり,レンビマ®投与により食道縦隔瘻形成のリスクがあったため,常用量の半量から投与開始した.投与後1週間目までに著明な腫瘍縮小がみられ,呼吸困難感消失,SpO2正常化,流動食しか通らなかったのが普通食が食べられるようになりQOLは著しく改善した.高血圧の副作用については薬物治療で対応可能であった.
【まとめ】レンビマ®投与により腫瘍縮小効果が投与早期(1週間以内)から認められた.副作用で高頻度といわれる高血圧は2例で認められたが,コントロール可能なレベルであった.切除不能甲状腺癌が進行した場合の症状は呼吸困難感,嗄声,嚥下障害と耳鼻咽喉科領域のものが多い.レンビマは,切除不能甲状腺癌に対し腫瘍縮小効果が期待でき,患者のQOLを向上させうることを耳鼻咽喉科医は認知しておくべきである.

2016/06/24 13:50〜14:26 P51群

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