第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【諸言】頭頸部癌進行再発症例に対する根治術は喉頭摘出であるが発声・嚥下などの生理機能喪失が問題となる.近年では高齢者の頭頸部癌患者の治療機会も増加しているが,手術侵襲に加えて機能喪失の大きな喉頭摘出術を高齢者に対して選択すべきか否かについては,症例によって迷う事も少なくない.今回,高齢者の頭頸部癌に対して喉頭摘出を行った症例について非高齢者群と比較検討したので報告する.
【対象】2000~2014年までに当科で頭頸部癌根治切除として喉頭摘出を含む手術を施行された48例.
【結果】75歳以上の高齢者群は10例(75~90歳,平均年齢81.8歳),75歳未満の非高齢者群は38例(51~74歳,平均年齢63.8歳)であった.高齢者群(非高齢者群)の術前背景因子は,男性9例/女性1例(男性36例/女性2例),喉頭癌7例/下咽頭癌2例/甲状腺癌1例(喉頭癌24例/下咽頭癌11例/口腔癌2例/中咽頭癌1例),PS0/1/2以上は2例/6例/2例(23例/11例/4例),ASA-PS 1/2/3は0例/9例/1例(6例/26例/6例)であった.45例で頸部郭清を含む喉頭摘出術が行われ,再建を行った22例の皮弁の内訳は遊離空腸2例/有茎皮弁2例(遊離空腸12例/前外側大腿皮弁5例(うち1例は遊離腓骨での下顎再建併用)/有茎皮弁1例),平均手術時間669分(692分),平均出血量351 ml(390 ml)と非高齢者と比較して有意な侵襲の差異は認めなかった.術後経過は合併症を生じたものが3例(18例),Clavien-Dindo3b以上が2例(9例)と非高齢者に比較して少ない傾向であった.術後在院日数が1年を超えた症例が1例あったが平均76.8日(54.7日),術後生存期間中央値は109ヵ月(70ヵ月:P=0.58)と有意差を認めなかった.
【結語】高齢者悪性腫瘍に対する喉頭摘出術は安全に行われており,長期予後も非高齢者と遜色のないものであった.しかしながら2例が1年以内に原病死しており手術適応の厳格化が望まれる.

2016/06/24 14:20〜14:44 P50群

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