第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】セミノーマの転移部位としては肺,肝,骨などがあり,リンパ節では後腹膜リンパ節が最多であるが,頭頸部領域への転移はまれである.今回われわれは,セミノーマ寛解より9年後に頸部へ転移を認めた1例を経験したので報告する.
【症例】49歳男性.
【主訴】左頸部腫脹.
【現病歴】X年1月より左頸部に無痛性の腫瘤が出現したため近医を受診した.頸部単純CTにて左胸鎖乳突筋背側に60×40 mmの境界明瞭な軟部陰影を認め,精査目的に当科を紹介受診された.
【既往歴】左精巣腫瘍,後腹膜リンパ節転移(セミノーマ pT2 N1 M0, stage2A),X-10年に左高位精巣摘除術,EP(エトポシド,シスプラチン)療法にて完全寛解.X-9年に左腎門部リンパ節転移に対して左腎門部,骨盤部に放射線を2.0 Gy×20回照射し,カルボプラチン50 mg×10回化学療法を施行して完全寛解し以降再発なし.
【入院後経過】診断・治療目的に,全身麻酔下に左頸部腫瘤を摘出した.腫瘤は左鎖骨上窩に存在し,内頸静脈に隣接していたが周囲組織との癒着は認めず,一塊に完全摘出した.病理組織はセミノーマであり精巣腫瘍の頸部転移と診断した.術後,当院泌尿器科をコンサルトし,カルボプラチンによる補助化学療法が2コース施行された.現在,術後8ヵ月が経過しているが再発・転移を認めない.
【考察】セミノーマは進行例が多い一方で,stage2A以上の進行例であっても化学療法が奏功し,高い治療効果が得られる.セミノーマの頸部転移例は海外・本邦ともに報告されているが,原発巣治療後5年以上経過しての頸部転移例は本邦では本症例が初めてである.
【まとめ】9年前に治療されたセミノーマの頸部転移と診断した稀な症例を経験した.頭頸部腫瘤をみた場合,他部位からの遠隔転移も念頭に置いた既往歴の聴取が重要と考えられた.

2016/06/24 13:50〜14:20 P49群

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