第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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甲状腺に転移性の悪性腫瘍がみられるのは極めて稀であるが,そのなかでは腎細胞癌の占める割合は最も多い.今回我々の経験した症例は原発巣切除後から27年目であった.初診時には悪性所見を認めなかったが,増大してきたため手術を施行し診断に至った.文献的考察を加えて報告する.
症例:74歳女性.
既往歴:41歳時に甲状腺腫摘出(詳細不明).
現病歴:X-26年1月31日右腎細胞癌のため右腎全摘術を施行し術後経過は良好であった.X-7年9月閉塞性黄疸を指摘され,当院外科紹介となる.膵悪性腫瘍の診断にてX-7年10月17日膵臓・胆囊・胆管・脾臓摘出手術を施行したところ,術後の病理検査結果にて腎細胞癌の転移と診断された.X-3年2月ごろより甲状腺右葉腫瘍指摘,増大傾向を認めX-2年3月26日に当科紹介となった.当科にて手術をすすめるも拒否され,外来通院も中断された.X年7月に右甲状腺腫瘍の増大傾向がありX年8月25日に再受診となった.
現症:呼吸苦や圧排症状なし.血液検査では甲状腺機能正常,自己抗体陰性,サイログロブリン上昇を認めず.FNA検査は濾胞性腫瘍疑いであった.エコー・CT・MRI検査にて腫瘍は境界明瞭,6×5×4.5 cmで上縦隔に進展し気管を左方に圧排し,富血性腫瘍が示された.明らかなリンパ節腫脹は認めなかった.増大傾向があり手術切除の方針となった.手術は葉峡部切除手術を行った.腫瘍は血管が怒張し易出血性であった.術後の病理結果にて免疫染色でCD10陽性,TTF1陰性で腎細胞癌の甲状腺転移の診断となった.腫瘍は被膜下に大小不同の濾胞細胞を認め腺腫様結節内に生じた転移の可能性があった.画像的に良性の腺腫との鑑別は困難で,増大傾向が生じて切除するまで診断に至らなかったと考えられた.
結語:腎癌は20年以上経過しても転移が診断されることもあり,その既往歴には注意が必要である.

2016/06/24 13:50〜14:20 P49群

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