第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】鼻副鼻腔には転移性腫瘍の発症も稀ではない.鼻副鼻腔領域に限った転移性腫瘍の原発は約50%が腎臓という報告もある.腎細胞癌転移の多くは血行性転移であり腎静脈から下大動脈を経由する肺循環を介する転移が主なため腎細胞癌の転移は,肺,リンパ節,骨,肝の順に多い.今回我々は上顎骨・篩骨蜂巣への骨転移で診断された腎癌転移例を経験したので報告を行う.
【症例】64歳,男性.現病歴:左鼻腔からの鼻出血を主訴に当科を受診したが,鼻腔内には明らかな出血点や粘膜異常は認めず,蝶形骨洞開放部より少量の凝血塊を認めた.腫瘍による出血を疑いCTを施行したところ左上顎骨から篩骨蜂巣にかけて骨肥厚・骨破壊を認めた.既往:高血圧,腰痛(以前から整形外科に通院しており数年前からは整骨院での施術と鎮痛薬を使用していた).経過:初診時の血液検査ではWBC11300/μl,CRP13.26 mg/dlと高値を認めていたが本人は鼻出血以外の症状は訴えなかった.骨破壊もあり鼻腔癌が疑われたため,全身麻酔下での内視鏡による組織採取を施行した.手術所見では篩骨蜂巣から上顎洞自然口までの骨は全体にシャーベット状に肥厚しており,篩骨洞粘膜を病理検査に提出したところ結果はadenocarcinomaで,既存の腺上皮,付属腺が保たれていることから転移性の腫瘍の可能性が高いと診断された.原発部位の精査目的でPET検査を施行したところ,副鼻腔骨だけではなく胸椎・腰椎を含む全身の多発性骨転移と多発性のリンパ節転移を認めた.その他,左尿管へのFDG集積は認めたが腎臓への集積は認めなかった.原発巣検索のため胸腹部造影CT検査を施行したところ,左腎に腫瘍を認めたため泌尿器科にて左腎臓を摘出した結果,腎癌(ベリニ管癌,G3, pT3a)が原発であることが判明した.その後泌尿器科においてMVAC療法が開始となるが治療開始から約1ヵ月後に汎血球減少が出現,肺炎を合併し全身状態低下のため死亡された.

2016/06/24 13:50〜14:20 P49群

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