第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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脱分化癌は既存の低~中悪性度癌から全く異なった組織型をもつ高悪性度癌が生じたものであり,元の癌と脱分化した癌の2種類が混在してみられる.唾液腺においては1988年にStanleyらによって初めて報告され,それ以降いくつかの報告が散見されるものの,きわめてまれな腫瘍である.今回われわれは耳下腺に発生した脱分化癌を経験したので報告する.
症例は47歳女性.約1ヵ月前から右耳下部腫瘤を自覚するとのことで,当科を受診した.エコー検査にて右耳下腺下極に29 mm大の境界明瞭で分葉形の低エコー腫瘤を認め,造影CT検査では辺縁に造影効果がみられた.周囲のリンパ節腫大は認めなかった.また,穿刺吸引細胞診では検体不適正であった.多形腺腫を第一に疑い,耳下腺浅葉切除術を施行した.腫瘍は顔面神経下顎縁枝と一部癒着していたが,顕微鏡下に神経外膜と腫瘍被膜を鋭的に剥離し,腫瘍を摘出した.迅速病理で悪性の可能性があるとの診断であったため,癒着部位の神経は切除し,断端を端々吻合した.また,明らかな周囲リンパ節腫大は認められなかったため,耳下部リンパ節のみ郭清した.永久病理所見では,大部分を脱分化成分が占め,一部の分化型成分は大小不同の腺管状配列をとる腺癌であり,脱分化癌の診断であった.被膜外浸潤は認められなかった.また,郭清リンパ節および切除した神経に悪性所見は認めなかった.現在までのところ,明らかな再発なく経過観察中である.

2016/06/24 14:38〜15:14 P48群

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