第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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唾液腺悪性腫瘍のなかでも,癌腫と肉腫を同時に認める癌肉腫は非常に稀である.今回,耳下腺に発生した進行した癌肉腫症例を経験し良好に経過しているため,報告する.
〈症例〉67歳女性.主訴は左耳下部腫瘤で,家族歴・既往歴に特記すべきことはなかった.喫煙歴は15本/日・約40年であった.
〈治療経過〉左耳下部腫瘤を自覚し,約1ヵ月後に当科紹介・初診となった.診察・画像診断にて周囲に浸潤する耳下腺腫瘍・頸部リンパ節腫大を認め,細胞診にて悪性腫瘍が疑われた.耳下腺悪性腫瘍の診断にて,手術加療をおすすめした.初診から約1ヵ月後,耳下腺拡大全摘(顔面神経合併切除・側頭骨一部切除・皮膚合併切除)・根治的頸部郭清・顔面神経静的再建・DP皮弁術を施行した.腫瘍は局所で進行しており,外耳道下壁・乳様突起前面と接しており,側頭骨の削開・外耳道下壁側の合併切除を要した.皮膚合併切除に伴い,DP皮弁による創部被覆が必要となった.病理診断では,分化傾向の不明瞭な肉腫成分が主体で,一部に腺癌の成分を伴う癌肉腫の診断で,断端は陰性であった.リンパ節転移はレベル2に5個あり,節外浸潤も認めた.術後,創部に空隙が生じ治癒が遅延したため,初回手術から約1ヵ月に形成外科により腹直筋皮弁術,顔面神経動的再建術を施行した.その後の経過は良好で,初回手術から約2ヵ月後より術後放射線治療(60 Gy)を施行した.治療終了後1年3ヵ月経過時のFDG-PETで再発・転移を認めず経過良好である.
〈考察〉唾液腺の癌肉腫はWHO分類では多形腺腫内癌の一型と定義されており,唾液腺癌の約0.4%程度にしか見られない稀な腫瘍である.治療は手術が主であり,放射線治療や化学療法の追加もなされることはあるが定まったものはない.予後は不良と言われており,5年生存が0%という報告もあるが,手術による長期生存の報告もあり,主な治療としては充分な安全域を取った切除術が良いと考えられた.

2016/06/24 14:38〜15:14 P48群

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