第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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耳下腺腫瘍の約20%は悪性腫瘍であり,その中で頻度の高い組織型として粘表皮癌が5~10%,腺様囊胞癌が5%と報告されている.一方,癌肉腫は上皮性悪性腫瘍である癌腫と非上皮性腫瘍である肉腫が同一腫瘍内に存在する悪性腫瘍であり,耳下腺に発生することは非常に稀である.今回,耳下腺原発の癌肉腫の1例を経験したため報告する.
症例は74歳女性.X-1年11月頃より右耳下部の腫脹を自覚し,X年6月に近医の総合病院耳鼻咽喉科を受診した.右耳下部に可動性良好な7 cmの腫瘤を触知した.疼痛は伴わず,MRIの結果で多形腺腫疑いとして,同院にて右耳下腺深葉摘出術が行われた.病理組織学的には多形腺腫であるが,一部に低悪性腫瘍の混在している可能性があると診断され厳重な経過観察となった.術後4ヵ月で右耳下部に3 cmの腫瘤が出現し,再発が疑われたためMRIを施行した.その結果,局所再発および右頸部リンパ節転移を指摘され,治療目的に当科紹介となった.
当科初診時には,約3 cm程度の右耳下部に腫瘤性病変が触知され,針生検を施行したところ線維肉腫が疑われるとの診断であった.針生検後に腫瘤の著明な増大傾向が認められ,X+1年1月に右耳介と周囲皮膚を含めた右拡大耳下腺全摘術,右上頸部郭清術,および遊離腹直筋皮弁による再建術を施行した.病理組織学的検査の結果,再発した腫瘍は粘液腫様成分と軟骨肉腫成分を含む癌肉腫と診断された.断端は陰性であり,リンパ節転移は認めなかったため,追加治療は行わず,外来経過観察の方針となった.術後10ヵ月経過するが,局所再発および遠隔転移は認められていない.

2016/06/24 14:38〜15:14 P48群

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