第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

上皮筋上皮癌は比較的まれな低~中悪性度の腫瘍であり,全唾液腺癌の約1%を占めると言われる.臨床的には高齢者女性に好発し,70~80%は耳下腺に発生し,局所再発は多いが,遠隔転移はまれとされる.今回われわれは上皮筋上皮癌の2例を経験したので,診断や治療法につき文献的考察を加え報告する.
症例1は82歳女性.左耳下部腫瘤を主訴に受診.術前診断では画像や細胞診で良性腫瘍が疑われたため,耳下腺浅葉摘出術を施行した.術後病理組織診断にて上皮筋上皮癌(T3N0M0)と診断されたため,局所再発の可能性を考慮し,放射線療法を局所に50グレイ照射した.現在治療開始後5年6ヵ月経過したが,再発や転移所見を認めず生存中である.
症例2は72歳男性.左耳後部腫瘤を主訴に受診.画像上,耳下腺から耳後部皮膚に浸潤する腫瘍を認め,細胞診で悪性腫瘍が疑われたため,耳下腺拡大全摘出術ならびに頸部郭清術を施行した.術後病理組織診断にて上皮筋上皮癌(T4aN0M0)で切除断端が一部陽性と診断されたため,局所再発の可能性を考慮し,放射線療法を局所に60グレイ照射した.現在治療開始後1年1ヵ月経過したが,再発や転移所見を認めず生存中である.
本腫瘍は局所再発率が高く,腫瘍の核出術や部分切除などの不十分な手術療法では局所再発率を増加させるので,術前に良悪性の診断を十分に行い,治療では根治的な手術療法を第一選択とし,必要に応じ術後に放射線療法を追加すべきであると考えられた.

2016/06/24 14:38〜15:14 P48群

操作