第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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リンパ腺腫は,唾液腺腫瘍のWHO組織分類において良性に分類される稀な上皮性腫瘍である.本腫瘍は,2005年のWHO組織分類の改訂版において,良性腫瘍では新たに採択された.
症例は31歳男性.急激に生じた左頬部腫脹,開口障害のため,近医歯科を受診し,精査加療目的に当科を紹介されたが,その後症状が消退したため3ヵ月間放置していた.しかし,3日前より同部の疼痛を認めたため,当科を受診した.初診時には触診にて左耳下部に軽度圧痛を伴う可動性良好なやや硬い小腫瘤を認めた.超音波検査では,左耳下腺内に大きさ25×14 mmの腫瘤性病変を認め,境界明瞭,分葉形,リンパ門を疑う中心部高エコーあり,腺内リンパ節の腫脹が疑われた.初診3日後に頸部造影MRI検査を施行したところ,T1強調画像で軽度高信号,T2強調画像で高信号,内部により強い高信号部分を認め,充実部は低信号から高信号まで多彩な信号変化を認めた.左耳下腺腫瘍の診断で手術加療を提示したが,患者の希望により経過観察となった.しかし,その後に再度左頬部腫脹を来し,感染の反復が疑われたため,本人の希望で手術の方針となった.
全身麻酔下にて,左耳下腺腫瘍摘出術を施行した.左耳下腺下極に弾性軟,13 mmの腫瘤性病変,および周囲腺組織の硬結を認め,それらの切除を行った.所見からはワルチン腫瘍の感染が疑われた.術後に明らかな顔面神経麻痺を認めず,経過良好なため術後5日目に退院した.病理組織診断は,多列線毛上皮で裏打ちされた囊胞で,上皮周囲には胚中心形成を伴うリンパ組織で,リンパ腺腫の診断となった.術後2ヵ月間で明らかな合併症や再発を認めていない.
易再発性や悪性化の報告は認めないが,稀な疾患であり,定期的な経過観察を要すると考える.

2016/06/24 13:50〜14:38 P47群

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