第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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多形腺腫は大唾液腺および小唾液腺を由来として発生するが,口腔内に生じるものとしては口蓋のものが多く,頬部,口唇,歯肉の報告は少ない.今回頬部に発生した小唾液腺由来の多形腺腫で外科的切除により治療を行った症例を経験したので報告する.
症例は35歳女性.10年程前より右頬部に腫瘤を自覚していたが徐々に増大してきたため当科を受診した.双手診では弾性硬で圧痛のない可動性のある腫瘤を触知した.頬部粘膜は正常であり顔面神経麻痺,開口障害等は認めなかった.MRIでは咬筋前縁に隣接して皮下の脂肪織内に28×20×17 mmの境界明瞭な腫瘤を認め,T1強調画像で低信号,T2強調画像ではやや不均一な高信号を示し内部には限局した低信号が散在していた.腫瘤はGd造影で増強されていた.頬部腫瘍として全身麻酔下に口腔内より腫瘍摘出術を施行した.万能開口器および筋鈎により術野を展開した.ステノン管を同定しブジーを挿入したが腫瘍による圧迫のためか奥に入っていかなかった.ステノン管下方で腫瘍直上に平行となるよう切開を加えた.頬脂肪体を分けていくと腫瘍表面が露出し,被膜に沿って周囲組織より剥離していった.腫瘍と周囲組織の癒着はみられなかった.頭側に腫瘍が入り込んでいる部分の処理はやや難渋したが,助手が皮膚側より腫瘍を押し出すことで操作可能となり腫瘍を摘出した.腫瘍による圧迫がとれたためかステノン管にブジーは容易に通った.またステノン管の損傷はみられなかった.顔面神経の術野への露出はなく術後も麻痺はみられなかった.摘出した腫瘍はダンベル型であり,組織学的に線維性組織に被覆され充実性,管状,乳頭状,網状の増殖を示し,間質には粘液貯留が認められ分化した軟骨組織の形成を伴い多形腺腫と診断された.術後経過は良好であり現在外来にて経過観察中である.

2016/06/24 13:50〜14:38 P47群

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