第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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線維素性唾液管炎は,反復する唾液腺腫脹に加え,唾液腺の圧迫により糸状やゼリー状の物質が唾液管開口部から排出されることを特徴としている.この排出物には線維素栓子や好酸球を多く含み,アレルギー性の疾患であると考えられている.本疾患に関して,画像上の特徴的所見は導管の拡張とされているが,CT上石灰化陰影もしくは唾石症の合併を認めた報告はこれまでにない.今回我々は,顎下腺唾石症として経過観察中,線維素性唾液腺管炎の診断に至った1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
症例は73歳男性.繰り返す左顎下部の腫脹を主訴に近医を受診したところ,CTで左顎下腺内に微小な石灰化陰影を認めたため,精査・加療を目的に当科を紹介され受診した.口腔底に腫脹はなく,左ワルトン管開口部に排膿は認めなかった.超音波検査で左ワルトン管の拡張を認めた.CT所見および症状より左顎下腺唾石症を疑った.患者が手術を希望しなかったため経過観察を行っていたが,その後も左顎下部の腫脹は反復した.初診より2年3ヵ月経過した際に,腫脹した左顎下腺を圧迫したところ,左ワルトン管から白色粘液様物質が排出された.排出物には多数の好酸球の集簇を認め,血清IgEの上昇も認めた.以上より,線維素性唾液管炎と診断した.その後,抗アレルギー薬等の内服は行っていないが,腫脹の再燃はなく経過している.CTで唾液腺に石灰化陰影を認めた場合には唾石症を疑うことが一般的であるが,唾液管より排出される粘液状物質を認めた際には本疾患を念頭に置く必要があると考えた.

2016/06/24 13:50〜14:38 P47群

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