第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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耳下腺腫瘍手術では顔面神経の取り扱いが重要で,特に良性腫瘍に対する手術では顔面神経を安全確実に温存することが要求される.耳下腺腫瘍の局在は,通常浅葉と深葉に分類されるが,顔面神経下顎縁枝より腫瘍の中心が下方に位置する腫瘍を,当科では下極腫瘍と分類している.当科における耳下腺腫瘍手術では顔面神経の同定は原則的に本幹同定法で行っているが,腫瘍が耳下腺前方に存在する場合には本幹非同定法(末梢法)で行うことが多い.前方腫瘍では皮膚直下に腫瘍が存在する場合でも顔面神経の分枝が腫瘍表層を走行している,いわゆる深葉腫瘍の場合が多いこと,また本幹からの神経剖出距離が長くなることなどがその理由である.一般的なS字皮切をやや長めに行うことで前方の腫瘍までの十分な術野を確保し,また耳下腺内を走行する顔面神経は末梢に行くに従いより浅層を走行することから,腫瘍が深葉型である可能性が高いことを常に念頭において手術に臨む必要がある.今回我々は,当科で施行した耳下腺腫瘍手術症例について検討し,前方に存在する腫瘍の割合,前方腫瘍における顔面神経の走行,術後顔面神経麻痺率などについて,他部位に存在する腫瘍と比較検討を行った.前方に存在する耳下腺腫瘍では他部位の腫瘍に比較し,表層を顔面神経が走行する深葉腫瘍の割合が高かった.前方に存在する耳下腺腫瘍における顔面神経の同定保護に関しては本幹同定法ではなく,末梢法が適していると考えられた.前方に腫瘍が存在する場合は,顔面神経の走行に注意し術前の説明にも留意すべきである.しかし,前方腫瘍の定義は必ずしも明確にはなっていないため,今後,前方腫瘍の定義に関して検討していく必要があると考えられた.

2016/06/24 13:50〜14:38 P47群

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