第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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耳下腺腫瘍は多彩な病理組織型をもっていることから術前に確定診断することは困難であり,診断的治療として手術が必要となる.さらに悪性であった場合でもその悪性度,局在に応じ顔面神経の取り扱いや頸部郭清を行うべき症例も存在する一方,手術が治療となりえない悪性リンパ腫においては手術そのものが過度な侵襲となりうるため,良悪性の診断だけでは治療方針につながらない可能性があることが問題点として挙げられる.今回術前診断に行われる穿刺吸引細胞診(FNAC)の有用性とその限界について検討を行った.対象は2005年4月~2015年11月川崎市立川崎病院にて,耳下腺腫瘍と診断されたのちFNACを施行し,手術を施行した59例.内訳は良性49例,悪性10例.男性36例,女性23例.悪性腫瘍は悪性リンパ腫5例,粘表皮癌2例,腺癌NOS,腺様囊胞癌,悪性黒色腫がそれぞれ1例であった.主訴の大半は腫瘤の自覚であり,疼痛を訴えた例は8例で,4例が悪性腫瘍(40.0%),4例が良性腫瘍(8.16%)であった.神経浸潤を認めた1例を除き顔面神経は温存しえた.悪性リンパ腫の5例中,FNACにより悪性リンパ腫が強く疑われる2例は開放生検のみ行った.悪性リンパ腫症例は1例を除き化学療法が行われた.FNACで疑陽性と診断された6例のうち,良性が1例で,悪性が5例.つまり83.3%は悪性であった.そのため疑陽性以上であれば悪性腫瘍を考慮する必要があると考えられた.FNACで疑陽性以上を陽性として,良悪性鑑別の正診率,感度,特異度はそれぞれ86.4%,70%,98%であった.FNACにより悪性リンパ腫が強く疑われたため2例は低侵襲な開放生検のみで診断することができた.しかし,残りの悪性リンパ腫3例は通常の耳下腺腫瘍に準じた手術を施行されており,腫瘍組織の推定に関しては診断の限界を認めた.FNACは良悪性の診断として高い正診率であり,また一部の腫瘍組織の推定も可能であったため,術前診断として有用であると考えられた.

2016/06/24 13:50〜14:38 P47群

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